“おしゃれ=無機質”ではない。”温かみのある”モダンインテリアを実現した施工記

“おしゃれ=無機質”ではない。”温かみのある”モダンインテリアを実現した施工記
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冷たくなりがちなモダンインテリアに、温かみを。

30代の女性・Bさんは都内でお一人暮らし。

お仕事は忙しく、日中はほとんど外出。

だからこそ「家にいる時間くらいは、自分らしく落ち着ける空間で過ごしたい」と、数年前から少しずつ家具を買い揃えていたそうです。

“モダンでおしゃれな部屋”にしたいと思って、白とグレーの家具を選んでいたんですけど、なんだか落ち着かなくて…


家具は自分でじっくり選び、色味も整っているのに、なぜか「素敵」よりも「そっけない」と感じてしまう日々。

暮らすうちに、その違和感が少しずつ大きくなっていき、今回インテリアコーディネートのご依頼をいただきました。

B様お見積書

モダンインテリアというと、シンプルで洗練された印象が魅力ですが、それは「直線的で冷たい」だけを意味するものではありません。

最近では、丸みを帯びたフォルムや、やさしい色使い、自然素材を取り入れた、“柔らかさのあるモダンスタイル”も注目されています。

素材・色・光のバランスを整えることで、“洗練”と“ぬくもり”を両立させた空間をつくることができます。

今回は、Bさんのお部屋の変化を通して、「温かみのあるモダンインテリア」を叶えるためのヒントをご紹介します。

 

・Before|モダンに憧れて揃えたはずなのに、どこか無機質に…

Before|モダンに憧れて揃えたはずなのに、どこか無機質に…

Bさんのお部屋は、ホワイトとグレーを基調にしたシンプルな空間。
テレビボードやソファ、ローテーブルも直線的なデザインで統一され、装飾を極力減らすことで“洗練された印象”を意識しているのが伝わってきました。

ところが、全体的に光沢のある素材が多く、装飾も最小限のため、暮らしの温度や柔らかさが感じられにくい状態に。
無機質な印象が先行
してしまい、Bさんご本人も「寒々しく感じる」とおっしゃっていました。

また、壁面にも装飾がなく、照明もシーリングライト1灯のみ。

夜になると特に“白くて明るいだけ”の空間になってしまい、リラックスしづらいとのことでした。

After|やわらかさと洗練を両立した、おしゃれな空間に

After|やわらかさと洗練を両立した、おしゃれな空間に

直線的なグレーのファブリックソファや白黒の大理石調テーブルでモダンさを保ちつつ、木目のTVボードや柔らかな質感のリネンカーテンを取り入れることで、冷たさの中に温かみを加えました。

丸みのあるチェアや有機的なアート、フロアライトの灯りが、直線的だった空間にリズムを与え、無機質さを緩和しています。

天井のシーリングライト1灯だった照明もフロアライトを追加し、光の表情に奥行きを。

無機質さを和らげながら、Bさんらしい洗練を大切にした空間へと生まれ変わりました。

冷たくならないモダンインテリアのために実践した3つの工夫

冷たくならないモダンインテリアのために実践した3つの工夫

洗練された印象を保ちつつも、ぬくもりや居心地の良さも感じられる空間づくりは、ここ数年でトレンドとなり、BoConceptやHAYなどの北欧ブランドでも“Warm Modern”というテーマが数多く打ち出されています(出典:HAY )。

今回のコーディネートでは、「温かみのあるモダン」を実現するために、素材・色・光と形の3つの視点から工夫を重ねました。

以下では、それぞれの工夫と意図をご紹介していきます。

工夫① 素材:ウッドやファブリックを取り入れ、ぬくもりをプラス

工夫① 素材:ウッドやファブリックを取り入れ、ぬくもりをプラス

直線的なアイアン脚やツヤ感のある家具だけで構成されると、空間はクールになりすぎてしまいがちです。

そこで今回は、木目のTVボードややわらかさを感じさせるブランケット、リネンのカーテンを取り入れることで、視覚的にも触覚的にも心地よさを与えるバランスに整えました。

グレーのソファは起毛感のないファブリックを選び、フラットで落ち着いた印象に。

ここにウッドや柔らかい繊維素材を足すことで、空間全体の“温度感”を引き上げる設計にしています。

これは、建築家・インテリアデザイナーにも支持されている考え方で、たとえば『ELLE DECOR(エル・デコ)』2024年4月号では、“冷たくなりがちなミニマルインテリアには、必ず天然素材の要素を加えるべき”と特集されています(※ELLE DECOR Japan 2024年4月号より)。

また、木材が心理的に安心感をもたらすという研究は、日建設計総合研究所の2021年レポート「木のぬくもりが心と身体に与える影響」にも詳しくまとめられています(※日建設計総合研究所より)。

工夫② 色:中間色でやさしく包み、黒でモダンをキープ

工夫② 色:中間色でやさしく包み、黒でモダンをキープ

Beforeでは、ホワイトとグレーのみで構成されていたため、空間に“そっけなさ”が出てしまっていましたが、Afterでは、ソファは明るいライトグレーに、アートでベージュを加え、全体を少し明るく調整しました。

その一方で、フロアライトやチェア、ミラーのフレーム、アートのラインなどに黒を効果的に配置し、空間がぼやけないように引き締めて、モダンさをキープしています。

こうした“中間色でやわらかく、黒でモダンさをキープする”手法は、Casa BRUTUS(2024年3月号)でも紹介された「ウォームミニマル」特集でも推奨されており、都会的でありながらも人が落ち着ける空間をつくる上で有効です。(※Casa BRUTUS 2024年3月号「ウォームミニマリズム特集」より)

工夫③ 光と形:丸みのあるフォルム×間接照明でリラックス感を演出

工夫③ 光と形:丸みのあるフォルム×間接照明でリラックス感を演出

光の取り入れ方や家具のフォルムにも、心理的な心地よさを左右する要素があります。

Bさんのお部屋では、シーリングライト1灯だけだったため、夜になると“白くて明るすぎる空間”になってしまい、視覚的にも硬さが際立っていました。

そこで、間接照明をプラスし、光が壁や床に広がるような設計に変更。

空間に影が生まれることで、深みとリラックス感が加わりました。

また、家具や雑貨も、角張ったものだけでなく、”曲線を描くフォルム(有機的なフォルムのミラーや丸みのあるカウンターチェアなど)”を取り入れることで、空間の印象をぐっとやわらかく仕上げました。

このような「光と形の組み合わせによる心地よい空間づくり」は、ELLE DECOR(2024年4月号)『Modern Interior with a Soft Edge』でも特集されており、今後ますます注目されるアプローチです。
(※ELLE DECOR 2024年4月号より)

「モダンにしたいけど冷たくしたくない」お部屋の課題と改善のアプローチ

Bさんのライフスタイルと希望

Bさんのライフスタイルと希望
beforeのお部屋

今回ご相談いただいたBさんは、都内で働く30代の会社員女性。
日中はフルタイムでオフィスに勤務し、平日はほぼ帰宅後に過ごす時間しか部屋にいないとのことでした。

だからこそ、「部屋に帰った瞬間、ホッとできる空間にしたい」との思いから、休日や空いた時間を使って少しずつ家具やインテリアを整えていたそうです。

インスタグラムやPinterestなどの画像を参考に、「白×グレー」を基調とした、いわゆる“モダンインテリア”を目指していたとのこと。

しかし実際に暮らしてみると、

「確かに見た目は“それっぽく”なったけれど、なぜか落ち着かないんです。おしゃれなのに、“生活する空間”という感じがしなくて…」

という、心と空間のズレに悩んでおられました。

このような悩みは、決してBさんに限ったものではありません。


2023年に『SUUMOリサーチセンター』が実施したアンケートによると、インテリアにこだわっている人のうち約42%が「スタイリッシュにしすぎて落ち着かない」と感じた経験があると回答しています(※SUUMOジャーナル「住まいとインテリアの理想と現実」調査2023)。

「おしゃれにしたいけど、冷たくしたくない」
これは現代の多くの女性が抱える、非常に共感性の高いインテリアの課題です。

元のお部屋の印象と、改善アプローチ

元のお部屋の印象と、改善アプローチ
beforeのお部屋

実際に拝見したBさんのお部屋は、色数を絞ったシンプルな空間。

家具のトーンやフォルムには統一感があり、一見すると洗練されたスタイリングでした。

ですが、次のような“空間の硬さ”が目立っていました。

1. 光沢のある素材が多く、空間にやわらかさがない

1. 光沢のある素材が多く、空間にやわらかさがない
ウッドやリネンなど自然素材も取り入れて、空間を柔らかく

テレビボードやローテーブルは鏡面仕上げのような表面加工で、照明の反射が強く、空間全体が「明るいのに落ち着かない」「硬い印象」に感じられやすくなります。


実際、インテリア業界の専門誌『I’m home.(商店建築社)』でも、「素材の選定は、空間の心理的な快・不快に直結する」として、特に居住空間においてはマットで温かみのあるテクスチャーが有効と繰り返し紹介されています(※『I’m home. No.117/2022年5月号』より)。

改善アプローチ
家具や小物の一部をウッドやリネンなど自然素材に置き換え。質感のあるブランケットもプラスすることで、光を柔らかく受け止め、空間全体がぐっと穏やかに感じられるようになりました。

2. 家具のフォルムがすべて直線的で、空間に動きがない

2. 家具のフォルムがすべて直線的で、空間に動きがない

beforeのお部屋はソファ・テーブル・TV台など、すべてが四角く、直線的。

視線の抜けが乏しく、室内全体が“硬直した印象”に。
現在のインテリア業界では、「有機的な曲線=心理的やわらかさ」を取り入れる流れが主流であり、たとえばArper(アルペール)やGubi(グビ)といったヨーロッパブランドも、曲線フォルムを軸としたコレクションを展開しています(※ArperGubi Official)。

改善アプローチ
有機的なフォルムのミラー、丸みを帯びたカウンターチェア、曲線のアートや間接照明など、丸みのある要素をプラス。空間に流れが生まれ、視覚的な緊張感がほぐれました。

3. 照明が天井一灯のみで、空間に陰影や表情がない

3. 照明が天井一灯のみで、空間に陰影や表情がない

シーリングライトのみで構成された照明は、部屋全体を均一に照らしてしまうため、時間帯や過ごし方に応じた“ムード”が演出しづらくなります。


インテリア照明の基本として知られる“多灯レイヤー照明”では、複数の光源(アンビエント/タスク/アクセント)を組み合わせることで、空間に深みと柔らかさ・居心地の良さをもたらすと推奨されています。

米国の照明専門メディアLumensでもこの手法は「部屋に命を吹き込む」と紹介され、実用的な照明設計として広く支持されています 。(出典:LUMENS「THE EDIT」- The Fundamentals of Light Layering(2022年))

改善アプローチ
調光・調色機能のある間接照明を新たに設置し、必要に応じて明るさや色温度を調整できるようにすることで、空間に表情と居心地が加わりました。

取り入れた家具・インテリアアイテムのご紹介

取り入れた家具・インテリアアイテムのご紹介

Bさんのお部屋では、空間に“温かみ”と“やわらかさ”を加えるために、素材やフォルムのバランスを意識してアイテムを選定しました。

特にポイントとなったのは、カーヴィーなフォルムを持つアイテムや、あたたかみのある光を演出する間接照明、そして空間の印象を一気に格上げするアートや雑貨の取り入れ方です。

以下に、実際に使用した主なアイテムをご紹介します。

ソファ
 シンプルで無駄のない直線的なデザインがモダンな印象を与えつつ、ファブリックの柔らかさで堅苦しくなりすぎない絶妙なバランスを実現。脚がすっきりしており、圧迫感を抑えて空間に余白を残してくれます。

ローテーブル
スリムな脚と直線的な構造が特徴。軽やかな抜け感と木目調の温もりを両立し、ソファとのバランスも◎。ブラックの脚が空間を引き締めます。

テレビ台
直線的なデザインがモダンな印象を強調しつつ、木の質感が冷たくなりすぎない。”ちょうど良い”テレビ台。

ミラー
有機的な曲線が、空間にリズムと柔らかさをプラス。鏡としての機能だけでなく、壁面装飾としても一役買っています。

カーテン
 リネンライクなナチュラル素材で、光をやわらかく取り込む仕様。直線的な家具の中に柔らかさを添える役割として、空間全体をやさしく包みます。

スポットライト
調色機能付きで、空間の雰囲気を自在にコントロール。角度調節ができるので、アートや植物に光を当てることで、視線のフォーカルポイントも明確に。
天井に馴染む白色を選び、圧迫感を抑えました。

間接照明
やわらかく拡散する光が、夜のリラックスタイムにぴったり。壁際に置くことで、空間の奥行きと落ち着きを演出します。調光・調色機能付き。

アート(Poster Store)
有機的なラインを描いた抽象画と、余白のある構図が特徴。ブラックフレームで空間に“モダンな輪郭”を添えつつ、視線のアクセントになるよう配置しています。

カウンターチェア(Umbra)
 丸みを帯びた背もたれと、スリムなブラックの脚。モダンな直線美の中に少しだけ可愛らしさが宿り、空間の印象をやわらげるエッセンスに。

ラグ(既存)
 もともとBさんが使用されていたIKEAのアイテム。明るめのグレーが空間に馴染んでいたため、全体のトーンに合わせて引き続き活用しています。

お客様の声|実際に暮らしてみて感じた変化とは?

コーディネートから数週間後、実際に暮らしてみた感想をBさんにうかがいました。ひとつひとつのアイテムが、日々の過ごし方や気分にどのような変化をもたらしたのか、お話しくださいました。

noa

変化を実感した瞬間はいつでしたか?

「初めて夜、間接照明だけで過ごしたときですね。これまで明るいシーリングライト1灯だけだったのが、空間に陰影ができて、一気に落ち着いた雰囲気になって…。『あ、ホテルみたい』って思ったのを覚えています。」

noa

お部屋での過ごし方に変化はありましたか?

友人が遊びに来た時の反応がまったく変わりました。『え、急にオシャレじゃない?』『すごく落ち着く』って言われて(笑)。前よりも人が来る機会が増え、長居してくれるようになりました。

noa

一番気に入っているポイントはどこですか?

アートとミラーの配置です。空間が立体的に見えるし、鏡があることで部屋が広く感じます。あと、やっぱり照明! 照明ってこんなに印象を変えるんだって初めて実感しました。

noa

このコーディネートを依頼してよかったことは何ですか?

“オシャレ=冷たい”って思い込んでいた自分に気づけたことです。今回の提案は、“自分がくつろげるおしゃれ”ってこういうことなんだ、と腑に落ちるものでした。居心地のよさとデザイン、どちらも妥協しない提案に本当に満足しています。

Bさんのように、何かを“足す”だけでなく、「なぜ落ち着かないのか」を見直すことで、自分らしい心地よい空間が見えてくることもあります。

まとめ|“おしゃれで心地いい”モダンインテリアを叶えるには?

まとめ|“おしゃれで心地いい”モダンインテリアを叶えるには?

モダンインテリア=無機質、というイメージを持たれている方は少なくありません。

けれど実際には、「おしゃれさ」と「ぬくもり」は共存できます。

今回のBさんの事例でもそうだったように、ポイントは“足す”ことよりも、“整える”こと。

具体的には、「素材」「色」「光と形」の3つを意識することで、ぐっと印象が変わります。

たとえば、硬質な素材ばかりではなく、木やファブリックなどの“触れて心地よい”質感を取り入れること。

色は明るめの中間色をベースに、ポイントで黒などの引き締め色を使うことで、洗練とやさしさのバランスがとれます。

そして、照明や家具のフォルムに丸みを持たせることで、緊張感をやわらげ、リラックスできる空間に近づきます。

“モダンで素敵な部屋”にしたい。でも、“冷たすぎるのは落ち着かない”。

そんな想いを抱えている方こそ、今回のように引き算と調和を意識したコーディネートを試してみてほしいと思います。

日々を過ごす空間が、あなたらしく、心地良い場所になりますように。

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