お部屋の印象をガラッと変えたいなら、家具よりも先に「照明」から見直すのが近道です。
とくに最近注目されている「多灯使い」=天井照明だけでなく、間接照明やランプを組み合わせるスタイルは、ただおしゃれなだけではありません。
部屋に奥行きと陰影が生まれ、視覚的にも心理的にも落ち着ける空間に変わります。
今回ご紹介するのは、都内で一人暮らしをしている30代女性・Gさんのお部屋。
“明るいだけ”だった空間が、多灯照明でときめきとくつろぎに満ちた場所へと変化しました。
「照明を変えたら、毎日の気分まで変わった」Gさん邸のビフォーアフター
都内で一人暮らしをしている30代のGさんは、在宅勤務が中心の事務職。
仕事終わりの時間をもっと心地よく、自分らしく過ごしたいと考えるようになったのがきっかけで、お部屋を見直すことを決意されました。
とはいえ、収納も整っていて、家具もお気に入りのものが揃っている。
それでもどこか、「物足りなさ」を感じており、今回ご相談をいただきました。
- Before|明るいだけで味気なかった頃の部屋

もともと使っていたのは、賃貸備え付けのシーリングライトひとつ。
室内はしっかり明るいものの、どこか“事務的な雰囲気”で、落ち着かずリラックスできないことに、Gさん自身もうっすら気づいていたと言います。

明るさには困ってなかったけど、夜くつろいでるはずなのに心が休まらなくて。
今思えば、空間にメリハリがなかったのかも。
殺風景ではないけれど、印象に残らない。
そんな“可もなく不可もない空間”が、Gさんの悩みでした。
- After|多灯使いで叶えた、奥行きと心地よさ


照明を見直す際に取り入れたのは、「多灯使い」と「間接照明」という2つのポイント。
天井の主照明に加え、リビングにはフロアランプ、ベッドサイドには柔らかい光のテーブルランプを配置しました。
これにより、部屋に“明暗のグラデーション”が生まれ、空間に奥行きと落ち着きが加わりました。



同じ部屋なのに、スイッチひとつで気持ちまで切り替えられるようになったんです。
照明って、暮らしの雰囲気そのものなんですね。
さらに、夜は間接照明だけで過ごすようになったことで、目にも優しく、睡眠の質も上がり、1日の終わりを心地よく迎えられるようになったと話します。
「ただ明るい」から「空間を演出する」へ。Gさん宅で取り入れた方法。
今、注目されている“多灯分散照明”とは?
照明は単に「明るくするためのもの」ではなく、空間全体の印象や過ごし方までも左右する要素へと進化しています。
その中でも注目されているのが、「多灯分散照明(たとうぶんさんしょうめい)」という考え方。
これは、1つのシーリングライトで部屋全体を照らすのではなく、複数の照明を分散配置することで“光のグラデーション”を生み出し、空間に奥行きとニュアンスを加える方法です。
- シーリングライト1灯時代との違い
日本の住宅では長らく「シーリングライト1灯」が主流でしたが、これは“作業効率”を重視した明るさ設計であり、リラックスや雰囲気づくりには不向きです。
インテリア雑誌『ELLE DECOR(エル・デコ)』や『I’m home.(商店建築社)』でも近年、「住宅照明における多灯化」は特集として繰り返し取り上げられています。
たとえばELLE DECOR 2022年12月号では、建築家の中村拓志氏が
「住宅照明においては“暗さの中に明るさを置く”ほうが、空間が美しく見える」
と語っており、光のメリハリが空間の質を高めるという観点が強調されています。(ELLE DECOR,2022年12月号)
- 海外インテリアやSNSでトレンドになっている理由
海外のインテリア文化では、多灯使いは“基本”とも言えます。
たとえばスウェーデンの「IKEA」公式サイトでも、“光の層(Layered Lighting)”というコンセプトのもと、以下の3種の照明を組み合わせることを推奨しています:
- Ambient Lighting(全体照明)
- Task Lighting(作業用照明)
- Accent Lighting(装飾・演出用照明)
また、Pinterestでは「multi lighting interior」で検索すると、特にアメリカ・北欧・オーストラリアの投稿において「リビング+ダイニング+デスクエリア」の3エリアそれぞれに異なる照明を取り入れる事例が多数掲載されています。
Instagramでも、@myscandinavianhome など人気インフルエンサーのアカウントでは、間接照明やフロアランプを活用した“明るさの分散”が日常的に紹介され、照明を通じた空間演出の意識が高まっていることが分かります。
- Gさん邸ではどのように取り入れたか?
Gさんのお部屋では、以下のような多灯分散を実施しました:
【全体照明】:IKEA「SINNERLIG」(電球色)
【サブ照明】:IKEA「STRANDAD」フロアランプ(柔らかい光で空間の輪郭を演出)
【アクセント照明】:FLYMEe Blanc「テーブルランプ #115917」(ベッド横に設置、間接照明的に使用)
さらに、スイッチ操作を分けたことで、“作業時モード”と“くつろぎモード”を気分で切り替えられるように。
「照明を切り替えることで、仕事のスイッチも自然とオフにできるようになりました」とGさんは話します。
“おしゃれ照明”はこう選ぶ。3つの視点
今回コーディネートする中で重視したのは、見た目のデザイン性だけでなく、光の質・ライフスタイルとの相性・空間全体との調和です。
この記事では、実際にご提案した照明プランに基づいて、“今っぽくておしゃれ”な照明を選ぶための3つの視点をご紹介します。
① 雰囲気を決める「光の質」を意識する
Gさんのお部屋は、備え付けのLEDシーリングライト1灯で充分な明るさが確保されていたものの、どこか“落ち着かない”と感じられていました。
原因は、部屋全体をフラットに照らす白色光が、時間帯や気分に合わせた空間の演出に不向きだったことにあります。
そこで私は、リビング用に電球色(約2700K)の竹製シェードフロアランプをメインに据え、夜のくつろぎタイムに適した柔らかい明かりを提案しました。
実際にGさんからは、



夜になると、ふわっと灯りが広がって、すごく落ち着くんです。
同じ部屋なのに、まるで違う空間にいるみたいで。
という感想をいただきました。
このように、照明には「明るさ」ではなく“質感や心理的な快適さ”を左右する要素があります。
この考え方は、『日経アーキテクチュア(2023年6月号)』でも、「照明計画は、光の“質”と“配置”によって空間の印象を大きく変える」と解説されており、空間心理に深く関わることが専門家の間でも強調されています。
② 見た目のデザイン性で“余白”を演出する
今回ご提案した照明は、すべて「点灯していないときの姿」も意識して選定しました。
たとえば、リビングに置いたIKEAのフロアランプ「STRANDAD ストランダド」は、シンプルな和紙シェードとスリムな縦型デザインが特徴。
昼間はオブジェのような存在感を持ち、夜は光を柔らかく拡散して空間に陰影を与えてくれます。
Gさんからも、
灯りをつけていないときも、ふと視界に入るとなんだか気分が良くて。インテリアの一部なんですね。
という言葉をいただきました。
このように、照明は単なる“明かりを取る道具”ではなく、空間の完成度を左右する“余白の美学”にもつながります。
デザイン性を重視する場合は、以下のようなブランドもおすすめです:
これらのブランドは『ELLE DECOR』『Casa BRUTUS』などの国内外のインテリア誌でも頻繁に紹介されています。
③ ライフスタイルに合った“使いやすさ”を忘れずに
どれだけおしゃれでも、「手間がかかる」「コードが邪魔」など日々の使い勝手が悪いと、結局使われなくなってしまいます。
今回は、リモートワーク中心のGさんの生活に合わせて、「スイッチを押さなくても自動で灯る」ようにスマートプラグ(TP-Link / Tapo P105)と連動させる提案を行いました。
Gさんは初めて使うスマート機器に少し不安を感じていたようですが、導入後は、



夜、帰宅すると自動で灯りがついていて、“おかえり”って言ってくれてるみたいで嬉しくなります。
と、照明が暮らしの一部として機能している実感を教えてくれました。
また、ランプはすべて据え置きタイプ・組み立て不要・電球交換可能な製品を選定し、メンテナンスのしやすさや長期的に使えるかも重視しています。
このように、照明を選ぶ際には「おしゃれに見えるか」だけでなく、
“光の質” “空間全体とのバランス” “日々の使いやすさ”という多角的な視点が必要になります。
実際に使った照明アイテムをご紹介
Gさんのお部屋にご提案したのは、「メイン照明+サブ照明+アクセント照明」の3種を組み合わせた“多灯使い”スタイル。
ここでは、実際に取り入れた照明アイテムと、その設置意図・空間への効果をご紹介します。
メイン照明:IKEA「SINNERLIG(シンネリグ)」ペンダントランプ


設置場所:リビング中央(天井)
光の色温度:電球色(約2700K)
空間全体をやわらかく包み込む“主役照明”として選んだのが、IKEAの人気アイテム「SINNERLIG(シンネリグ)」。
竹素材のシェードが特徴で、ナチュラルな質感と影の出方が非常に美しく、点灯時には天井と壁に繊細な陰影が浮かび上がります。
この照明は、建築家イリス・アプフェルが監修したコレクションの一部であり、ELLE DECORやApartment Therapyでも“自然素材を活かしたライティング”の好例としてたびたび取り上げられています。



この照明をつけると、どこか旅先のホテルにいるような気分になります。
とGさん。
空間の「重心」をつくる役割として、視線の集まる場所に設置することで、全体に一体感と奥行きが生まれました。
サブ照明:IKEA「STRANDAD」


設置場所:TVボード横
次にご紹介するのは、「あえて空間に余白を生む」ためのサブ照明です。
ここでは、光源そのものよりも「光の反射や揺らぎ」を楽しむアイテムを選びました。
壁面に沿って和紙から間接的に広がる光が、奥行きとリズムを生み出します。



ふと視界に入るとほっとする感じが好きです。
“光の演出”に近いこちらの照明は、夜の静けさを大切にしたい方におすすめです。
アクセント照明:FLYMEe Blanc「テーブルランプ #115917」


設置場所:ベッドサイドのチェスト上
光の色温度:電球色(約2700K)・ワンタッチスイッチ式
夜のくつろぎ時間に欠かせないのが、アクセント照明としてのテーブルランプ。
今回は、FLYMEe Blancの陶器ベース×布シェードのランプを採用しました。
落ち着いたベージュトーンのセラミックベースに、ほんのり透け感のあるリネンシェード。電球色の光が柔らかく広がり、ベッド周りに“自分だけの読書と癒しの時間”をつくります。



寝る前にこの灯りだけで過ごすと、自然とスマホから離れて、静かな時間を過ごせるようになったんです。
Gさんのように在宅ワーク中心の生活では、「ONとOFFの切り替え」が難しくなりがち。
この照明が、視覚と心理の“境界線”をやさしく引いてくれる役割を果たしています。
照明を主・従・演出に分けて配置することで、Gさんのお部屋はただ明るいだけの空間から、“気分や時間によって灯りを着替える”ような空間へと生まれ変わりました。
【インタビュー】実際に住んでみてどう?Gさんに聞きました
インテリアコーディネートを通して、照明の多灯使いを取り入れたGさん。
実際に住んでみて、どんな変化があったのか、率直な感想を伺いました。



多灯使いにして、1番変わったと感じるのは?



気分の切り替えがしやすくなって、夜が前より好きになりました。
在宅ワークで1日中家にいることも多いのですが、夕方にサブのランプだけをつけると、自然と“お疲れさま”の気持ちになれるんです。
夜の時間を大切にできるようになって、自分を労わる感覚が持てるようになりました。



最初に照明を変えることに迷いはありましたか?



正直、照明でそんなに変わるのかな?って半信半疑でした(笑)
家具や収納と違って“目に見えて大きく変わるもの”ではないと思っていたので、提案を聞いても最初はピンとこなかったんです。
でも、お話を受け入れて実際に取り入れてみたら…びっくりしました。空気感そのものが変わったんです。



これから照明を取り入れようとしている人にひと言お願いします。



迷ってるなら、まずは1つだけでも取り入れてみてほしいです!
私も最初はフロアランプ1本だけでしたが、それだけでも全然違いました。
なんとなく部屋にしっくりこない…と感じている人ほど、照明を変える価値があると思います。
Gさんの言葉からもわかるように、照明は空間だけでなく、“過ごし方”や“気持ちの整え方”まで変えてくれる力があります。
照明を見直してからは、「光のバリエーションで空間の表情が変わる」ことを実感されたそうです。
来客から「なんかホテルみたい」と言われることもあり、空間に対する満足感が一段と上がったとも話されていました。
まとめ|“照明は空間のファッション”。自分らしい演出を楽しんで
「照明を変えるだけで、ここまで空間の印象が変わるなんて思わなかった」
Gさんのように、Before→Afterを体験された方が必ず口にされる言葉です。
照明は、家具のように大きな投資をしなくても、空間の雰囲気を劇的に変えることができるアイテム。
まさに“空間のファッション”のように、その日の気分や時間帯に合わせて着替えられるのが魅力です。
インテリアにおいて照明は「最後に選ぶもの」だと思われがちですが、実は最初に見直すべき“空間の空気感を決めるカギ”でもあります。
今回ご紹介したように、
- 天井照明だけに頼らず、光のレイヤーを重ねる
- 明るさではなく、光の質を意識する
- 見た目のデザイン性や、ライフスタイルとの相性も大切にする
そんなポイントを押さえるだけで、あなたの部屋も、“ときめきと安らぎに包まれる空間”に近づくはずです。
自分の「好き」や「なりたい気分」を叶えるために、照明からはじめてみませんか?
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