旅先で感じた「ときめき」や「空気感」を、洗面所に再現
Fさんは、都内のマンションで一人暮らしをされている40代の女性です。
仕事はフルタイムで、休日は一人で美術館に出かけたり、カフェでゆったり本を読んだりと、自分の時間を丁寧に過ごすライフスタイルを大切にされています。
旅行が大好きで、これまで訪れた国は15カ国以上。
中でも、バリ島の自然と調和したホテルや、北欧のミニマルなホテルの洗面所が心に残っていたそうです。
「そのときめきを、毎日の暮らしにも取り入れたい」
そんな想いから、洗面所のインテリアを見直すプロジェクトがスタート。
Fさんの洗面所は、生活感があふれていた以前の状態から一転、朝晩の時間が楽しみになる“自分だけの癒し空間”へと生まれ変わりました。
- before | 生活感のある洗面所に感じていたモヤモヤ

「洗面所に入るたびに、気持ちが沈んでしまっていたんです」とFさん。
生活感のある洗剤ボトルや、色のバラバラなタオル、乱雑に置かれたスキンケア用品たち。
清潔にはしていても、“ホテルのような整った空気感”には程遠く、どこか気が休まらなかったと振り返ります。
特に気になっていたのが、「物の多さ」と「色のチグハグ感」。
朝の支度も、夜のリラックスタイムも、どこか“作業的”になってしまっていたそうです。
- after | まるでホテル!心が整う洗面所へ

完成した洗面所は、Fさんが憧れたニューヨークのThe Ludlow Hotelのバスルームを彷彿とさせる空間に生まれ変わりました。
ベースカラーは、白タイル調の壁紙で清潔感とクラシックさを演出し、アクセントには黒のフレームミラーやマットブラックのディスペンサーを採用。さらに、真鍮風の金具やガラス製トレーなど、細部に「Ludlowらしさ」をちりばめました。
間接照明で陰影が生まれるように調整し、夜になるとまるでホテルのバスルームのように静かでドラマチックな空気感に包まれます。
整然と並んだ洗面アイテムは、ガラスや陶器など素材の質感にこだわって選定。統一感のあるパッケージと、空間に馴染む香りのディフューザーが、洗面所を「支度の場」から「気持ちが整う場所」へと昇華させました。

「あのホテルの空気を、まさか自宅で再現できるなんて…」
そう話すFさん。
毎朝ここに立つと、まるでNYの旅先にワープしたような気持ちになれるそうです。
旅先で感じたときめきを、毎日の空間に。再現のポイント
Fさんが洗面所づくりのインスピレーションにしたのは、ニューヨーク・ロウワーイーストサイドにある「The Ludlow Hotel(ラドロー・ホテル)」。
宿泊したのは「Studio」タイプの部屋で、公式サイト(https://ludlowhotel.com/sleep/1/studios/)に掲載されているバスルームの画像にもあるように、白いサブウェイタイルに黒いグリッドライン、重厚な金属フレームの鏡や照明が特徴的です。



「まさに映画のワンシーンのようでした。白×黒のタイル、ガラス張りのシャワー、クラシカルな蛇口。
全体に漂う“静かな存在感”に心を掴まれました」
さらに、このホテルは「コンデナスト・トラベラー(Condé Nast Traveler)」や「Architectural Digest」といった一流メディアでも取り上げられており、
“Old New York meets modern luxury(古き良きNYと現代ラグジュアリーの融合)”として紹介されています(Condé Nast Traveler, “The Ludlow Hotel”, 2023年9月号)。
ラドローの魅力は、ただ高級であるということではなく、「潔さと温もりの両立」にあります。
Fさんは、この世界観を洗面所という小さな空間の中で表現したいと考えました。
Fさんの要望は次の3つに集約されました。
- 白と黒を基調にしながらも、冷たく見せたくない
- 生活感を隠して、ホテルのような非日常感を演出したい
- お気に入りの香りや雑貨も“自然に馴染む”ように配置したい
そのため、Fさんの洗面所作りで大切にしたのは、「世界観の再現」ではなく「空気感の再構築」でした。
再現ポイント①:視覚の静けさを生む「白×黒×素材感」の設計


https://www.sangetsu.co.jp/product/detail/FE76637/
ラドローホテルのバスルームは、白のサブウェイタイル×黒の目地×金属素材のコントラストが特徴的ですが、その印象を再現するうえで鍵となったのが「色と素材のバランス」でした。
- 壁紙:トキワ産業「TWP-346」(サブウェイタイル柄)
Fさんの洗面所では、実際にタイルを貼ることが難しかったため、サンゲツの「FE76637」を採用。
目地の立体感や光沢感もリアルに表現されています。
「タイル柄だけでここまで雰囲気が変わるなんて」とFさん。
実際、Before/Afterでは壁紙ひとつで印象が劇的に変化しています。
再現ポイント②:鏡と光で「奥行きと余白」をつくる
ニューヨークのThe Ludlow Hotelの洗面所は、シンプルでありながら空間に奥行きを感じさせる照明設計が秀逸です。
Fさんの空間づくりでは、照明とミラーの存在が“ホテル感”を決定づける鍵になりました。
- ミラー:IKEA「LINDBYN リンドビーン」


https://www.ikea.com/jp/ja/p/lindbyn-mirror-black-50590449/
ラドローのような黒フレームの縁取りが特徴的な丸型ミラーを、IKEAから選定。
IKEAのミラーは、『モダンリビング(Modern Living)』や『LiVES(ライヴズ)』などのインテリア誌でも取り上げられているように、手頃でデザイン性の高いアイテムが揃います。
黒い細フチは空間を引き締めつつ、重くなりすぎない絶妙な存在感。
- 照明:ART WORK STUDIO「Groove-wall lamp」


https://artworkstudio.co.jp/products/aw-0514?srsltid=AfmBOopRr9kzhy_lTHlnyfu3H1C93a-lFCycpt9BWt5fv7owB26ylizr
照明は壁付けタイプを採用し、バスルーム特有の“柔らかく包まれるような光”を再現。
選んだのは、ART WORK STUDIO製のシンプルなウォールライトで、電球色の暖かみのある光が空間に陰影を生み出しています。
こちらのウォールランプは敢えて配線や固定ネジの存在を隠すようなデザインで、壁や天井との一体感を演出、明かりを灯した際の浮遊感が特徴的です。
再現ポイント③:香りと質感で「記憶に残る空間」へ
ホテル空間で五感を刺激する要素のひとつが「香り」。
ラドローホテルも例外ではなく、廊下やバスルームにはウッディかつアーシーな香りが漂っていたとFさんは語ります。
- 香り:Aesop「アロマティック ルームスプレー イストロス」


https://www.aesop.co.jp/home-fragrance/room-sprays/istros-aromatique-room-spray/FR17.html
Fさんにご提案したのは、Aesopのルームスプレー「イストロス」。
ローズ、ラベンダー、ミルラをベースにした香りは、公式オンラインストアや『Casa BRUTUS』(2021年5月号)でも“都市型のリラックスを表現する香り”として紹介されています。
ホテルの記憶とリンクする香りを選ぶことで、洗面所が「過ごす場所」から「感じる場所」へと変わりました。
- トレー:HAY「ガラス製トレイ」&CLASKA「真鍮トレイ」
日用品はすべてトレー上に統一。
HAYのミニトレイはデンマーク発のデザインブランドらしく、ガラスの揺らぎが光を取り込んで美しい反射を生み出します(出典:HAY Japan公式 https://www.hay-japan.com/)。
一方、CLASKAの真鍮トレイは、日本の職人による手仕事で経年変化も楽しめる逸品です(出典:CLASKA Gallery & Shop “DO” https://www.claskashop.com)。
「気に入ったものだけを使う」。その姿勢が、洗面所の空気を豊かにしてくれました。
これら3つのポイントを掛け合わせることで、Fさんの洗面所はThe Ludlow Hotelのように
静けさ・品・心地よさが共存する“記憶に残る空間”として完成しました。
The Ludlow Hotel風洗面所に使ったアイテムとショップ紹介
Fさんの洗面所は、「海外ホテルのような世界観」と「暮らしやすさ」を両立させることを目指しました。ここでは、実際に使用した主なアイテムや購入先、選定理由をご紹介します。
- 使用した主なアイテム一覧
アイテム | ブランド名・商品名 |
---|---|
ミラー | IKEA 「LINDBYN リンドビーン」 |
壁紙 | サンゲツ「FE76637」(サブウェイタイル柄) |
照明 | ART WORK STUDIO「Groove-wall lamp」 |
ディスペンサー | IKEA「GANSJÖN ガンショーン」 |
タオル | 「ヒオリエ(泉州タオル)」ホテルスタイルフェイスタオル(グレー) |
香り | Aesop「アロマティック ルームスプレー イストロス」 |
- 購入したショップ・ブランドと選定理由
▷ IKEA(ミラー・ディスペンサー)
Fさんの洗面所には、IKEAの「LINDBYN(リンドビーン)ラウンドミラー」を採用。直径60cmのシンプルな黒フレームは、空間を引き締めつつも圧迫感がなく、ラドローホテルのようなクラシック×モダンな雰囲気を演出します。
また、ディスペンサーは「GANSJÖN(ガンショーン)シリーズ」で統一。マットな質感のブラックボトルは、生活感をおさえながら高見えと実用性を両立。SNSでも「#ホテルライク」「#洗面所収納」タグで多く取り上げられています(出典:IKEA公式、インスタグラム投稿多数)。
▷ サンゲツ(壁紙)
タイル貼りが難しい賃貸物件でも、空間の印象を大きく変えるのが壁紙。
Fさんの空間では、サンゲツの「FE76637」(サブウェイタイル柄)を使用しました。
この壁紙は、建材業界誌『新建築住宅特集(2022年11月号)』や「日経クロステック」内の施工事例特集でも紹介された人気品番で、リアルなタイル感とマットな質感が特徴です。貼ってはがせるタイプで、DIY初心者にも安心。
▷ ART WORK STUDIO(照明)
照明には、インダストリアルテイストが魅力のART WORK STUDIO「Groove-wall lamp」を壁付けで使用。真鍮調のベースとミルクガラスのシェードが、ラドローホテルのようなクラシックモダンな世界観にぴったり。
ART WORK STUDIOは、『Casa BRUTUS』や『LiVES』などのインテリア誌で特集される日本発ブランドで、国内でもホテル・カフェ空間に多数導入実績があります。
▷ ヒオリエ(タオル)
タオルは、老舗の泉州タオルブランド「ヒオリエ」のホテルスタイルフェイスタオル(グレー)をセレクト。
肌触りと吸水性に優れ、見た目も高級感があり、“生活感を見せない”を実現するには欠かせないアイテムです。
ヒオリエは、『LDK』『MONOQLO』など比較系雑誌で何度もベストバイに選出されている実力派。
落ち着いたグレーカラーは、モノトーンの洗面空間とも好相性。
▷ Aesop(香り)
Fさんが最も「空気感が変わった」と語る要素が、香りの演出。
採用したのは、Aesopの「アロマティック ルームスプレー イストロス」。
ラベンダーやピンクペッパー、フランキンセンスをブレンドした知的で都会的な香りが、まさにラドローホテルで感じた「洗練された静けさ」にリンクしたといいます。
この香りは、Aesop公式サイトや『Casa BRUTUS』(2021年5月号)で“空間に深みを与えるスプレー”として紹介されており、五感でホテルライクを再現する最後の仕上げとなりました。
「一つひとつは手に届くアイテムでも、組み合わせることでここまで空間が変わるとは思いませんでした」
とFさん。
その言葉どおり、洗面所は“買い足し”ではなく、“選び抜く”ことで空気を変える場所になったのです。
プチプラでも高見えする“ホテル感”を出せた理由
Fさんの空間が「海外ホテルっぽい」と感じさせる理由は、アイテムの価格帯ではなく、統一感と質感のコントロールにあります。実際、1,000〜3,000円台のアイテムも多数使用しています。
- ポイント①:“白・黒・ゴールド・天然素材”で色数を絞る
カラーパレットは「白×黒」を基調に、「真鍮ゴールド」や「竹」のような温かみ素材を補助に使うと、統一感とリズムが生まれる。
- ポイント②:日用品は“見せるか隠すか”を明確に見せるアイテムは素材・形を揃える。
例えばディスペンサーやトレー。隠すアイテム(洗剤、ストック類)は、ボックスにラベリングして完全収納。
- ポイント③:ガラス・金属・陶器など、素材に“映り”を取り入れる
光を反射する素材(真鍮、ガラス、釉薬陶器)は、狭い空間に“抜け感”と上質さをもたらす。ホテルではよく使われる手法。
「決して高級なもので揃えたわけではないのに、色と素材と香りにこだわるだけで、洗面所ってここまで変わるんですね」とFさん。
そんなFさんの空間には、“高見えするけれど、手の届く現実感”があり、同じように暮らしを整えたい人にとって大いに参考になるはずです。
Fさんにインタビュー「洗面所が変わって、どんな変化がありましたか?」
施工後、Fさんに洗面所の変化についてじっくり伺いました。
今回は、Fさんの「旅先で感じた心地よさ」を日常に落とし込むことをテーマに進めていきました。



ホテル風にしたいと思ったきっかけは?



実は昔から、ホテルのバスルームや洗面所が大好きだったんです。
旅先でラグジュアリーな空間にいると、自然と背筋が伸びて、「ああ、自分のことを大切にできてるな」って思える瞬間があって。
特にThe Ludlow Hotelに泊まったときの、白と黒を基調にしたクラシックで洗練された雰囲気が忘れられなくて…。
自宅でも、あの“整った静けさ”を再現できたら、毎日がもっとキラキラするんじゃないかと思ったのが最初のきっかけでした。



実際に完成してみて、気に入っているポイントは?



たくさんありますが、一番は“光の感じ方”が変わったことです。
以前は天井照明のままで、空間がのっぺりしていたのですが、壁付けの間接照明を提案していただいたことで、夜になると空間に陰影ができて、ホテルのような奥行きが生まれました。
あと、ディスペンサーやタオル、トレーまで色味と素材を統一してくださったおかげで、視界にノイズがなくなって、スッキリ見えるようになった気がします。
細かいところですが、真鍮のトレーや香りのアイテムなど、「自分では見つけられなかったけど、すごく好き!」と思えるものを提案してもらえたのも嬉しかったです。



暮らしや気持ちにどんな変化がありましたか?



朝の時間が、以前よりも好きになりました。
洗面所に立つと、「整った空間に身を置くことで、自分も整えられる」って実感するんです。
以前はバタバタしながら顔を洗っていたのが、今はちょっと丁寧にスキンケアしようかなって思えるようになりました。
夜も、好きな香りを漂わせながら照明を落として、まるでホテルにいるような気分で気持ちをリセットしています。
日常に余白ができた、そんな感覚がありますね。



今後、お部屋づくりで大切にしていきたいことは?



「整った空間にいると、自然と自分も整う」ということを今回改めて感じたので、これからは“心地よさ”を軸に部屋づくりをしていきたいなと思っています。
つい見た目やトレンドに流されがちだったけど、“旅先でときめいたあの瞬間”のような、自分の感覚に正直な空間を選ぶことが、結果的に暮らしを豊かにしてくれるんですね。
次はリビングか、ワークスペースを少しずつ整えていきたいです。また相談させてくださいね!
Fさんの言葉からは、洗面所という小さな空間が、暮らし全体に静かなポジティブな波紋を広げていることが伝わってきました。
誰かのためではなく、“自分のために整える空間”の力。その可能性を、私自身も改めて感じさせてもらえるお仕事になりました。
まとめ|好きな世界観を空間に落とし込む、洗面所から始める理想の暮らし
今回のFさんの洗面所コーディネートでは、ニューヨークのThe Ludlow Hotelで感じたときめきをヒントに、旅先の記憶を“今の暮らし”に丁寧に落とし込むことを大切にしました。
ポイントは、高価なもので揃えることではなく、「感性にフィットするものを選ぶ」こと。
素材、色、香り、光——そのひとつひとつにFさん自身の感覚を重ねていくことで、空間が「自分を整える場所」へと変化していきました。
そして何より、Fさんが語ってくださった、
「空間が整うと、気持ちも整う」
という言葉は、洗面所という小さなスペースにこそ、日常を変える力があることを教えてくれます。
ホテルのような洗練された空間に、旅の記憶と自分の心地よさをかけ合わせて。
“誰かのため”ではなく、“自分のため”の空間づくりを、まずは洗面所から始めてみませんか?
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