“なりたい暮らし”を叶えるには、空間から変えるのが近道だった
Dさんは、都内で一人暮らしをされている30代の女性。
在宅勤務が中心のワークスタイルで、将来的にはフリーランスとして独立したいという目標をお持ちでした。
「もっと自分らしく、気持ちよく過ごせる部屋にしたい」
そんなご相談から、今回のコーディネートが始まりました。

Dさんの理想は、“仕事に集中できるけれど、生活感もあって落ち着ける部屋”。
その理想に対して、今のお部屋は「物の配置が曖昧で、気づけばソファで仕事、食事、休憩もすべて済ませてしまっている」という状態。
空間にメリハリがないことで、Dさん自身も「オンオフの切り替えができない」と感じていたそうです。

頑張りたい気持ちはあるのに、だらだら過ごしてしまう…
そんな声を受けて、まず取り組んだのが “空間の使い方”を再設計すること でした。
【Before】


ソファ中心で生活が完結していた状態。リビングに仕事道具や書類が出しっぱなしだった。
【After】


ワークスペースとリラックススペースを分け、目的ごとの“居場所”をつくることで、空間にメリハリが生まれました。
一番変えたかったのは、“見た目”よりも“あり方”だった
Dさんの変化を見ていて印象的だったのは、「家具の配置や色味」以上に、空間との向き合い方そのものが変わったということ。
ただおしゃれにするのではなく、
「ここでこう過ごしたい」という意図を明確にして、空間に機能を持たせていったことで、
暮らし全体にリズムと気持ちの余白が生まれました。
【施工ストーリー】なりたい未来から逆算して、部屋づくりを再設計
ライフスタイルの理想を「言語化」するところから始めた
Dさんとの最初のセッションで行ったのは、空間を整える前に「どんな風に暮らしたいか」「理想の1日の流れ」を一緒に書き出すことでした。
これは、マーク・フォースターの著書『Do It Tomorrow』でも提唱されているように、「思考を外に出す(=言語化)」ことが、行動を変える第一歩になるからです。(出典:『Do It Tomorrow』,Mark Forster,2014)
✍️Dさんが出したキーワード:
「自分の時間を大切にしたい」
「朝はコーヒーと静かな空間から始めたい」
「仕事に集中しやすい場所がほしい」
また、近年注目されている「リビング・ラボ型デザイン思考」(参考:経済産業省「デザイン経営」資料)でも、
“未来のありたい姿”から逆算して空間や製品を設計する手法が有効とされています。
こうしたプロセスをベースに、Dさん自身が本当に望む暮らしを明文化したことで、「整えるべき場所」「投資すべきモノ」がクリアになっていきました。
どこをどう変えた?空間づくりの優先順位と考え方
次に行ったのは、部屋全体のゾーニング(用途分け)と、視線・動線の設計です。
ここでは、建築家・伊礼智さんの考え方を参考にしました。伊礼さんは著書『伊礼智の住宅設計作法』の中で、
「空間は“使い方”から考えることで、暮らしが自然に整っていく」と述べています。(出典『伊礼智の住宅設計作法』,伊礼智,2009)
Dさんの場合、
・リビングに“なんでも置き場”ができていた
・仕事と休息の区切りが曖昧だった
という課題があったため、
以下のように空間の役割を再設計しました:
スペース | 再設計後の役割 |
---|---|
窓際スペース | ワークエリア(自然光が入る=集中力UP) |
ソファまわり | リラックス専用ゾーン(間接照明+ラグで演出) |
キッチン背面 | 必要最小限の収納&ディスプレイスペース |
さらに、2023年のPinterest Predicts(Pinterest Japan発表)によると、「マイクロゾーニング(部屋の中に役割分担をつける)」は今後も注目される暮らしの潮流とされており、Dさんのような在宅ワーク中心の生活においても非常に有効です。(出典:Pinteresr Predicts)
「まず変えたのは照明と配置」~レイアウトとアイテムの変更ポイント
Dさんの部屋づくりで、最初に変えたのは「照明」と「家具の配置」です。
照明に関しては、IKEAの「FADO」テーブルランプと、天井照明の電球を電球色(2700K)に変更。
これにより、夜の時間帯でもリラックスしやすい光環境を整えました。
また、作業用の照明としては、無印良品の「LEDアルミアームライト」をデスクに追加し、集中タイムと休憩タイムのスイッチングがしやすくなっています。
家具の配置では、
・ソファの位置を少し壁から離して“余白”を生む
・ワークスペースは窓際に移動し、日中の自然光を最大限に活用
といった視線の流れと採光を意識したレイアウト変更を行いました。
これらの工夫によって、Dさんは「部屋にいるだけで、自然と気持ちが切り替わる」と話されています。
「未来の自分は、どう暮らしていたいか?」という問いから始まった今回の施工。
言語化 → 設計 → 実装というプロセスを踏むことで、“なんとなく心地よくなりたい”を“具体的にどう過ごしたいか”に変換できたことが、成功のカギとなりました。
実際に使ったアイテムと、その選定理由
“なりたい暮らし”を叶えるためには、空間の印象を左右する家具や雑貨選びも重要です。
Dさんの場合は、「頑張りすぎず、自然体で整っているように見える空間」をご希望だったため、デザイン性だけでなく、使いやすさ・色合い・質感の調和を重視してアイテムを選定しました。
家具編:サイズ感・色味・素材で“らしさ”を表現
Dさんの空間は約10畳のワンルーム+キッチンという構成。スペースに限りがあるため、“大きすぎず、軽やかに見える家具”を中心に提案しました。
選んだ家具の例:
・ラタンのラウンジチェア(IKEA / BUSKBO)
→ ナチュラルな風合いと、透け感のある軽やかなデザイン。空間に圧迫感を与えず、自然素材の温もりも演出できます。
・丸みのあるベージュ系ソファ(LOWYA)
→ Dさんの「くつろぎたい」という想いに応える、柔らかいフォルムと肌触り。直線的な家具が多かったお部屋に、曲線を取り入れることで優しい印象に。
・シンプルな木製ワークデスク(unico / ADDAYデスク)
→ ワークエリア用に配置。明るいオーク材で、作業効率と心地よさを両立。配線が目立たない設計もポイント。
雑貨編:暮らしのリズムに合ったアイテムを厳選
雑貨類は、「朝・昼・夜」の気分の切り替えをサポートするものを中心にセレクトしました。特にDさんは朝時間を大切にしたいタイプだったため、朝の気分を上げる工夫を散りばめています。
選んだ雑貨の例:
アロマディフューザー(無印良品 / インテリアフレグランスオイル)
→ 香りは「グリーン×シトラス」。朝のシャキッと感を演出。夜はリラックス系に切り替える2本使い。
キャンバスアート(@theposterclub)
→ 北欧デンマーク発のアートブランド。主張しすぎない抽象的なアートは、空間に“抜け感”を生み出します。
ファブリック系アイテム(H&M HOME / フリンジ付きクッションカバー)
→ ソファやベッド周りにアクセントとして使用。トーンを統一しつつ、素材感で変化をつけるのがポイント。
選んだブランドやショップ情報
Dさんの空間では、ハイブランドとプチプラをミックスすることで、“ちょうどいいこだわり感”を実現しました。以下のようなブランドやショップを利用しています。
アイテムカテゴリ | ブランド / ショップ名 | 特徴 |
---|---|---|
家具 | IKEA / LOWYA / unico | ナチュラルで機能的なデザインが豊富 |
雑貨 | 無印良品 / H&M HOME / Francfranc | 季節感や素材感を取り入れやすい |
アート | The Poster Club / Desenio | 北欧系で空間に“抜け”を作れる |
照明 | IKEA / JOURNAL STANDARD FURNITURE | 柔らかい光を演出できるスタイル照明 |
こうしたアイテムを組み合わせることで、Dさんの“理想のライフスタイル”に合った、等身大で心地よい空間が完成しました。
インテリアを変えたら、暮らしと気持ちがどう変わった?Dさんに聞いてみました
施工後しばらく経った頃、Dさんに「空間が変わってからの暮らし」についてお話を伺いました。
フリーランスとしての準備を進めながら日々を過ごす中で、部屋が与える影響の大きさを実感されているようです。



空間を整えてから、どんな変化を感じましたか?



以前は、家にいてもなんとなく集中できなくて、やる気が出ない日が多かったんです。
でも、今は「ここで仕事する」「ここではくつろぐ」と決めたことで、自然と気持ちが切り替わるようになりました。
一日が終わったときの満足感が全然違います。



変化を実感した瞬間は、どんなときでしたか?



朝の時間です!今まではベッドでギリギリまでダラダラしていたのに、
今は自然と早起きして、コーヒーを飲みながら窓際のワークスペースに座るのが日課に。
空間って、習慣まで変えてくれるんだなって思いました。



特にお気に入りの場所やアイテムはありますか?



ラタンのチェアがお気に入りです。
読書したり、ぼーっとしたり、自分と向き合える“余白の場所”みたいな存在になっています。
あと、夜に間接照明だけにするとすごく落ち着くんです。あの空間があるだけで、心が休まる感じがします。



このコーディネートで「やってよかったな」と思うことは?



自分の“こうなりたい”って気持ちを、ちゃんと空間に反映させてもらえたこと。
漠然とした理想をうまく引き出してくれて、それを形にしてもらえたのがすごく嬉しかったです。
見た目以上に、「気持ちが整う場所」になったのが一番の変化かもしれません。
【まとめ】理想の暮らしは、“未来”を描くことから始まる
今回のDさんの施工では、見た目を整えること以上に、「どう暮らしたいか」「どう在りたいか」という“理想の未来像”を言語化することが、空間づくりの起点となりました。
なんとなくモノを選ぶのではなく、
「自分はどんな1日を過ごしたいのか」
「どんな気分で朝を迎えたいのか」
「どんな場所で働いていたいのか」
—— そんな問いを繰り返すことで、暮らしは自然と理想に近づいていきます。
たとえば、Dさんのように:
- 朝、窓から自然光が差し込むデスクで静かに仕事を始めたい
- 夜はお気に入りの照明の下で、ゆっくりと一日を振り返りたい
- 自分の気持ちをリセットできる、何も置かない“余白の場所”がほしい
そんな具体的な未来像があって初めて、「この家具を選ぼう」「ここには照明を置こう」という判断にも一貫性が生まれます。
“理想の暮らし”は、今この瞬間の延長線上にはない。
だからこそ、一度立ち止まって、未来から逆算してみることが大切です。
すべてを一度に変える必要はありません。
まずは1か所だけ、自分が“心地いい”と思える場所をつくることから始めてみてください。
その小さな一歩が、理想のライフスタイルを引き寄せる大きな力になります。
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