何を置けばいいか分からなかった玄関が、“私らしく整う場所”に。30代女性Iさんとのおしゃれな置物選びとインテリア施工記

何を置けばいいか分からなかった玄関が、“私らしく整う場所”に。30代女性Iさんとのおしゃれな置物選びとインテリア施工記
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玄関が自分らしく整うと、毎日が変わる

「玄関が自分らしく整うと、毎日が変わる」
これは今回、私がインテリアコーディネートを担当させていただいたIさんのお部屋を通して、あらためて実感したことです。

帰宅して最初に目に入る場所——それは、1日の終わりを迎える自分を最初に出迎えてくれる空間でもあります。

だからこそ、たとえ小さなスペースでも、ほんの少しの工夫や「好き」の要素を取り入れるだけで、暮らしの質がぐっと上がるのです。

今回のご依頼主であるIさんは、都内で一人暮らしをされている30代女性。
「玄関がなんとなく寂しい」「何を置けばいいのか分からない」というお悩みからご相談をいただき、ヒアリングを重ねながら、“自分らしさ”を表現できるアイテム選びとコーディネートをご提案しました。

玄関の印象は、たったひとつの置物からでも大きく変わります。
ここからは、施工前後の写真とともに、Iさんのビフォーアフターをご紹介していきます。

Before → After|殺風景だった玄関が“ごきげんな入口”に

before 何も飾りがなく、素っ気ない玄関。
before 何も飾りがなく、素っ気ない玄関。

Iさんのお悩みは、「玄関が殺風景で、帰ってきても気分が上がらない」というものでした。
生活感を出したくないという思いから、飾りすぎるのも違う。

でも、何もないのも寂しい。

そんな“ちょうどいいバランス”が分からず、長い間玄関は白い壁と靴箱だけの状態だったそうです。

ご相談を受けたとき、最初に行ったのは「ご自身が好きな空間」「気分が上がる場所」についてのヒアリングでした。


Iさんが口にしたのは、旅先のホテルロビーや、ギャラリーのように静かな存在感のある空間。

そこから「ただ飾る」ではなく、「自分を整えて送り出し、迎え入れてくれる場所」としての玄関づくりを意識して、提案をスタートしました。

after 5つのアイテムで、気分の上がる洗練された空間に。
after 5つのアイテムで、気分の上がる洗練された空間に。

結果的に、置いたのはたった5つのアイテムだけ。
でもその1つひとつがIさんにとって「好き」と感じられるものであり、色・質感・配置を丁寧に整えることで、空間全体に洗練された雰囲気が生まれました。

Afterでは、Iさんが「毎日、玄関を通るだけで嬉しくなるようになった」と話してくれました。
大きな模様替えをしなくても、“気持ちが動く置物”ひとつで、玄関はこんなにも変わります。

都内在住・30代一人暮らしのIさんとは?

Iさんは、都内の1LDKマンションで一人暮らしをされている30代の女性。
事務系のお仕事をされていて、在宅勤務も多く、平日はほとんどを自宅で過ごすライフスタイルです。

「部屋の中はある程度整えてきたけれど、玄関だけはずっと後回しにしていて…」
そう話してくれたIさんにとって、玄関は“通り過ぎるだけの場所”でした。

でもある日ふと、「毎日目にする場所こそ、自分らしく整えたい」と思ったことが、今回のご相談のきっかけだったそうです。

「誰かに見せるためじゃなく、自分のために整える玄関にしたい」
そんな想いを伺いながら、Iさんの好みや理想の暮らし方を一緒に深掘りし、“自分らしさ”がにじむ玄関づくりがスタートしました。

最初に行ったのは、“気分の上がらない原因”のヒアリング

玄関インテリアのご相談を受けたとき、私が最初に行うのは「なぜその場所が整っていないと感じるのか」という“感情面の違和感”の深掘りでした。
なぜなら、空間づくりは見た目の美しさだけでなく、「その人の気分が整うこと」が何よりも大切だからです。

「何を置けばいいか分からない」Iさんの本当の悩み

Iさんは当初、「玄関が殺風景で、何を置けばいいのか分からない」と話していました。
けれど、その言葉の奥には「選ぶ基準が分からない」「失敗したくない」「玄関に何を求めているのかが曖昧」といった、判断軸が定まっていないモヤモヤがありました。

これは多くの人が抱える悩みで、たとえば整理収納アドバイザーの近藤麻理恵さんも著書『人生がときめく片づけの魔法』の中で、「物を捨てられないのは、“自分が何を大切にしたいか”が分からないから」と述べています。(『人生がときめく片づけの魔法』,近藤麻理恵,2010)
同様に、何を“飾る”かも、自分の価値観が明確でないと決めづらいものなのです。

そのため、見た目だけの提案ではなく、Iさんが「何にときめくか」「どんな空間に安心するか」を一緒に紐解いていくことからスタートしました。

「好きだけど飾ったことがないもの」にヒントがあった

ヒアリングの中でIさんがぽろっと口にしたのが、「旅先のホテルのロビーが好き」「ギャラリーのような空間に惹かれる」といった言葉でした。

特にIさんが印象的だったと話してくれたのが、パークハイアット東京のロビー空間
照明は控えめで、アートやオブジェがさりげなく置かれていて、静かで落ち着いた印象だったそうです。
この話を聞いたとき、「この方は“生活感のない静かな気配”に心地よさを感じるタイプかもしれない」と仮説を立てました。

また、インテリアスタイル診断のフレームワークとして参考にしたのが、書籍『MODERN LIVING モダンリビング』や雑誌『ELLE DECOR』に掲載される海外インテリア実例です。
Iさんの好みに近い事例を一緒に見ながら、「こういうのが落ち着く」「これはちょっとモダンすぎる」など、感覚のすり合わせを重ねることで、“Iさんらしい玄関”の輪郭が見えてきました。

このように、空間を整える上で大切なのは、置く物そのものよりも「自分はどんな空間に心が落ち着くのか」を言語化していくプロセスです。
そのヒントは、意外と「なんとなく好きだったもの」「飾ったことはないけど気になっていたもの」の中に隠れていることが多いのです。

“私らしい玄関”をつくるために選んだ3つの置物とコーディネートの工夫

Iさんの玄関を整える上で大切にしたのは、「ただおしゃれにする」のではなく、Iさんらしさが滲む空間にすること。
そこで、インテリアのプロとして私が意識したのは、以下の3つの要素です。これは雑誌や海外インテリア書籍でも繰り返し語られている、“シンプルながら奥行きのある空間づくり”の基本でもあります。

高さと奥行きを意識して“奥行き感”をプラス

玄関という限られた空間では、立体的に見せる工夫が重要です。特に、奥行きのない平面的な配置は“殺風景な印象”につながるため、アイテムに高さの差をつけて配置することで、空間にリズムと奥行きを与えることができます。

この手法は、インテリアスタイリスト・石井佳苗さんの著書『簡単! インテリアDIYのアイデア Love customizer』の中でも紹介されており、

「同じ高さのアイテムを並べると、のっぺり見える。高低差をつけるだけで視線が動き、空間が生き生きとする」


という記述があるように、高さのバランスは小さなスペースほど効果的です。(『簡単! インテリアDIYのアイデア Love customizer』,石井佳苗,2013)

Iさんの玄関でも、低めのトレイ+中くらいのキャンドル+高さのあるフラワーベースを組み合わせ、奥行きのあるレイヤー感を演出しました。

色味は2〜3色に絞って、統一感を出す

雑貨や置物を飾るときにありがちなのが、「可愛いから」「もらいものだから」とバラバラに並べてしまうこと。
けれど、色味が多すぎると、どうしても雑然とした印象になってしまいます

そこで、今回はIさんの好みに合わせて「ホワイト・ベージュ・真鍮」の3色に絞り、全体のトーンを整えました。
この「色数を絞る」テクニックは、建築家・トラフ(TORAFU ARCHITECTS)の著書『TORAFU ARCHITECTS 2004-2011 トラフ建築設計事務所のアイデアとプロセス』でも紹介されており、

「要素が多くなるほど、整理することが空間に“静けさ”をもたらす」


と書かれているように、色彩の統一は視覚的ノイズを減らし、“洗練された印象”を生みます。(『TORAFU ARCHITECTS 2004-2011 トラフ建築設計事務所のアイデアとプロセス』,トラフ建築設計事務所,2011)

Iさんもこの3色に絞ることで、「小物を置いてもスッキリ見えるのが嬉しい」と話してくれました。

“好き”や“思い出”が詰まったアイテムを一つだけ主役に

空間を整える際、どうしても「何か足りない気がして、いろいろ飾りたくなる」という声をよく聞きます。
でも実は、たった一つの“思い入れのあるアイテム”を主役にする方が、空間には芯が生まれます。

Iさんの場合、それが旅先で購入されたポストカード。

以前訪れた北欧のデザインミュージアム(ヘルシンキの「Design Museum」)で出会ったもので、当時は「飾る場所がない」と思って仕舞い込んでいたそうです。

このように、“記憶”や“感情”が詰まったアイテムを飾ることは、暮らしと空間をつなぐストーリーを生む大切な要素です。
実際、ライフスタイル誌『&Premium』の特集「楽しく部屋を、整える。」(2023年3月号)でも、

「記憶や思い出が宿るモノをひとつ飾るだけで、空間にストーリーが生まれる」


と紹介されています。


この3つの要素は、誰にでもすぐに取り入れられるシンプルなテクニックですが、選び方や意味づけを意識することで、玄関という限られたスペースにも深みや豊かさを与えてくれます。

Iさんの玄関に実際に取り入れた、おしゃれで実用的なアイテム

ここからは、Iさんの玄関に実際に取り入れたアイテムをご紹介します。
選定の基準は、「自分らしく感じられること」「視覚的に心地よいこと」「玄関という機能的な場所でも扱いやすいこと」。
これまでのヒアリングやスタイル分析をもとに、必要以上に飾り立てず、それでいて印象に残るアイテムをバランスよく組み合わせました。

①【HAY|TINT WINEGLASS SET OF 2】

HAY 【TINT WINEGLASS SET OF 2】
HAY 【TINT WINEGLASS SET OF 2】

本来はグラスですが、玄関では小さなドライフラワーを一輪挿しにして使用しています。
「透明感のあるガラスが、空間に“抜け”を作ってくれて気持ちいい」とIさんもお気に入り。

デザイン性と実用性を兼ね備えたHAYの定番シリーズ。海外インテリアらしい「用途の自由さ」も魅力です。

②【Scope|Alvar Aalto Collection ベース95mm】

アルヴァ・アアルト コレクション ベース 95mm クリア IITTALA
Scope【Alvar Aalto Collection ベース95mm】

「北欧の旅先で見たミュージアムショップを思い出す」と話してくれたのがこのオブジェ。
光の当たり方で表情が変わり、時間帯によって玄関の雰囲気も変化します。

デザインミュージアムやMoMAでも扱われる定番の名作。手のひらサイズでも、玄関に静かな存在感を与えます。

③【ACTUS|stem WOOD PLATE Sサイズ W3721】

ACTUS|stem  WOOD PLATE Sサイズ W3721
ACTUS【stem | WOOD PLATE Sサイズ W3721】

「鍵置きとして使えるけど、いかにも“トレイ感”がないのが気に入っています」とIさん。
無垢材のぬくもりが加わることで、空間に柔らかさがプラスされました。

どんなスタイルにも合わせやすく、ディスプレイのベースとしても優秀。

④【ZARA HOME LEMON BERGAMOT リードディフューザー】

ZARA HOME 【LEMON BERGAMOT リードディフューザー】
ZARA HOME 【LEMON BERGAMOT リードディフューザー】

「玄関ドアを開けた瞬間にふわっと香るのが気分を上げてくれる」とIさん。
香りはインテリアの一部。目に見えないけれど、“印象”を大きく左右します。

香りとビジュアルが両立されたデザイン。生活感を出さずに芳香を取り入れたい人におすすめ。

⑤【ポストカード+木製フレーム・ハガキサイズ(無印良品)】

無印良品【木製フレーム・ハガキサイズ】
無印良品【木製フレーム・ハガキサイズ】

「旅先で買ったポストカードをやっと飾れたのが嬉しい」とIさん。
フレームに入れることで“作品”としての存在感が生まれ、空間にストーリーが加わります。

小さなアートを取り入れたい初心者さんにもおすすめの、ミニマルで合わせやすいフレーム。

「全部合わせても5点だけなのに、空気感がガラッと変わったのがすごい」
そうIさんが話してくれたように、置物選びは量ではなく“質と意味”。
たとえ一つでも、自分らしさや思い出が込められたアイテムは、空間の雰囲気も、自分の気持ちも整えてくれるのです。

Iさんに聞いてみました!“気分が上がる玄関”の感想は?

今回のコーディネートを通して、玄関は「ただ通る場所」から、「自分を整える場所」に変化しました。
実際に玄関を整えた後、Iさんがどんな気持ちの変化を感じたのか、リアルな声を伺いました。

noa

実際に整えてみて、どんな気持ちの変化がありましたか?

帰宅したときに、ふっと気持ちが緩むようになりました。
今までは何もない玄関で、靴を脱いだらすぐリビングへ…という感じだったんですけど、今は「好きな空間に帰ってきたな」と思えるようになりました。
朝も、出かける前に鍵を取るときに香りがふわっとするだけで気持ちが軽くなるんです。
小さな変化なんですけど、その積み重ねで一日のスタートや終わりがすごく穏やかになりました

noa

ご提案した置物を見たとき、どんな印象を持たれましたか?

「こういうのを置くと、こんなに雰囲気が変わるんだ…!」って、正直びっくりしました。

自分では思いつかないようなアイテムばかりだったけど、どれも“私っぽい”感じがして、すぐに馴染んだんです。

旅先で買ってしまいこんでいたポストカードをフレームに入れてもらったり、普段だったら選ばないアートっぽいオブジェも、「好きだな」と思えるのが不思議でした。

プロの方に選んでもらうと、ちゃんと自分の感覚とリンクしているものを提案してくれるんだなと感じました。

noa

来客や友人の反応に変化はありましたか?

この前、友達が遊びに来たときに「玄関、なんか素敵!」って言われて嬉しかったです。

特別なことはしてないのに、“ちゃんとしてる感じ”が出るんですね。笑
でも何より、「自分が自分に対して丁寧になれた」って感覚がいちばん大きいかもしれません。

誰かに見せるためじゃなく、自分のために整えるって、こんなに気分が良いんだなって思いました。

Iさんのお話からも伝わるように、玄関の置物は“見せる”ためではなく、“整える”ためのインテリア。
小さなアイテムでも、それが自分にとって意味あるものなら、暮らし全体の空気感を変える力を持っています。

まとめ|玄関は「自分を整える場所」。置物ひとつで、日常の印象が変わる

玄関は、外から帰ってきた自分を最初に迎えてくれる場所。
そして、また新しい一日へと送り出してくれる、大切な“境界線”でもあります。

今回のIさんのように、「何を置けばいいか分からない」と感じていた空間でも、
“気分が上がる一つの置物”をきっかけに、自分らしさや心の余白が生まれました。

おしゃれな空間にすることがゴールではなく、「その場所に立ったとき、自分がどう感じるか」がいちばん大切。
それを知っている人の玄関は、どこか整っていて、品がありながら、やさしさを感じさせてくれます。

「これ、好きだな」
「なんか気分が上がる」
まずはそんな気持ちを大切に、あなたらしい玄関づくりの第一歩をはじめてみませんか?

暮らしの入口から、自分をもっと心地よく整えていくヒントになれば嬉しいです。

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