都内在住・30代一人暮らしのFさん。
在宅ワーク中心で過ごす時間が長く、「部屋にいるのに落ち着かない」「物が多く見える」と感じていたそう。
今回、インテリアコーディネーターである私が、Fさんのリビングに“観葉植物を使った余白デザイン”を提案しました。

「植物の置き方」を変えるだけで、空間も気持ちも驚くほど整いました。
少しの工夫で、こんな嬉しいお言葉をいただくことができました。
▼ Before:コーディネート前のリビング写真


▼ After:観葉植物を取り入れた後のリビング写真


観葉植物で変わった、“おしゃれ”と“心地よさ”の両立
Fさんのリビングコーディネートで意識したのは、「見せるための植物」ではなく、「空間に呼吸を与える植物」です。
インテリアの世界では、空間の“抜け”や“余白”が心地よさを左右すると言われます。
これはZARA HOMEやIKEA、ACTUSなどの海外ブランドのビジュアルでも一貫して見られる考え方で、物量ではなく「空間にどれだけ余白を残すか」が“上質さ”の鍵とされています。
ポイントは「飾る」ではなく「余白をつくる」発想
観葉植物を置くとき、多くの方は「空いたスペースを埋める」感覚で配置してしまいがちです。
しかし、Fさん邸では逆に“空間を整えるために植物を置く”という発想に切り替えました。
心理学的にも、空間の密度と人のストレスには相関があります。
たとえば、東京大学の前田真彦准教授(建築環境工学)の研究では、
「人は空間内の“視覚的な詰まり”にストレスを感じやすく、視線の抜けがあるほどリラックス効果が高い」
と報告されています(出典:日本建築学会『心理と建築デザイン』, 2015)。
この考え方をもとに、Fさんのリビングでは、ソファ横にトーンを抑えたフィカス・ウンベラータを配置。
幹の曲線が柔らかく、葉の抜け感があり、圧迫感を与えないシルエットです。
あえて家具の間に「余白」をつくることで、部屋全体の呼吸が整いました。
また、葉の影が壁に映ることで、空間に時間の変化が生まれます。
これは英国のライフスタイル誌『ELLE Decoration UK』でも、“Shadow Play(影のデザイン)”として取り上げられており、「光と影の動きを生かす植物配置」が、海外インテリアでは意図的に行われています。
💡ポイント:
おしゃれな部屋ほど“余白と影”がある。
それは家具でも小物でもなく、植物が担う“空気のデザイン”なのです。
2. 生活動線と光を意識した配置で、自然と整う空間に
次に重視したのは、“おしゃれ”と“暮らしやすさ”を両立させる配置。
Fさんは在宅ワークが中心で、「仕事中もリビングで過ごす時間が長い」というライフスタイル。
そこで、光と動線の流れを基準にグリーンをレイアウトしました。
リビング南側の窓際には、朝日を受ける位置にエバーフレッシュを配置。
この植物は昼間は葉を開き、夜になると自然に閉じるという特徴があり、その“動き”が日々のリズムを感じさせてくれます。
『NHK趣味の園芸』(2023年7月号)でも「時間とともに変化を楽しめる観葉植物」として紹介されており、
光との相性が良い点も高評価です。
さらに、デスク背面には”サンスベリア(トラノオ)”を配置。
NASAの「Clean Air Study(1989)」でも報告されている通り、サンスベリアは空気清浄効果が高く、CO₂濃度を下げて集中力を保つ効果が期待できる植物として知られています。
Fさんは「仕事中、ふと後ろを振り向くとグリーンが見えるだけでホッとする」と話しており、
単なる装飾ではなく、“心理的リセットの仕掛け”として機能しているのが印象的でした。
💡ポイント:
光と動線を意識した配置は、見た目の美しさだけでなく、「暮らしが整う」感覚を自然に生み出す。
それが“おしゃれと心地よさ”を両立させる鍵。
実際に使ったアイテム紹介(植物・鉢・家具の組み合わせ)
今回のFさん邸では、「ナチュラル × モダン × 抜け感」をテーマに、植物・鉢・家具・照明のトーンコーディネートを行いました。
「おしゃれに見せる」ためのセオリーは、実はアイテム単体ではなく“組み合わせ”にあるというのは、インテリア誌『Casa BRUTUS』(マガジンハウス, 2024年6月号)の特集「Green & Interiors」でも語られています。
そこでも“植物の種類 × 鉢の素材 × 光のデザイン”を意識することが「自然体で上質な空間をつくる」鍵とされています。
植物のセレクトと意図
1. フィカス・ウンベラータ
柔らかく広がる大きな葉が特徴のウンベラータは、インテリアブランド「ACTUS」や「IDÉE」でもディスプレイグリーンとして多用されています。
特に、幹の曲線が生む“動き”が空間にリズムを与え、女性らしい優しさを感じさせるのが魅力です。
『ACTUS Style Book vol.9』(ACTUS, 2014)では、「リビングの主役にならないグリーンとして、視線の抜けをつくる樹形」と紹介されています。
Fさん邸では、白壁とナチュラルウッドの間に配置。
ボリュームを抑えつつも存在感を感じるバランスを意識しました。
2. エバーフレッシュ
日中に葉を開き、夜には閉じる“眠る植物”。
その生態は『NHK趣味の園芸』(2023年7月号)でも特集され、「時間とともに暮らしを感じさせるグリーン」として紹介されています。
リビングの窓際、朝日が差し込む場所に配置。
日中はふんわり広がる葉が光を受け、夜には葉を閉じて一日の終わりを知らせてくれる存在に。



葉が閉じる瞬間を見ると、なんだか一緒に“おやすみ”している気分になります。
このように、“動きのある植物”を取り入れることで、空間が静止画のようにならず、生きている部屋に変わりました。
3. ポトス・ライム
天井から吊るすグリーンとして採用。
明るい黄緑の葉が“視線の抜け”を生み、上方向にも空間の広がりを感じさせます。
ポトスはNASAの「Clean Air Study(1989)」でも、空気中のホルムアルデヒドやベンゼンを除去する効果が高い植物として紹介されており、見た目だけでなく機能性も兼ね備えています。(出典:NASA Clean Air Study “Interior Landscape Plants for Indoor Air Pollution Abatement”, 1989)
特に一人暮らしのワンルームなどでは、「床面積を取らずにインテリアを格上げできる」点が大きなメリットです。
鉢・プランターの選んだ理由とスタイリングでの意識
ZARA HOME|ストーン調プランター
ZARA HOMEは、スペイン発のライフスタイルブランドで、世界的にも“素材感と色のトーンバランス”に定評があります。
今回使用したストーン調プランターは、表面のマットな質感が植物の緑を引き立て、光の反射が柔らかくなることで全体が落ち着いた印象に。
HAY|Flower Pot
デンマークブランド「HAY」は、『Wallpaper* Magazine』(2023年9月号)でも「日常をデザインする家具ブランド」として特集されました。
このFlower Potシリーズは、カラーガラスの透明感が光を通し、植物の影を美しく演出します。
北欧らしいシンプルさの中に遊びがあり、“軽やかに見せたい”スペースに最適。
無印良品|ラタンバスケット
ラタン(籐)の素材は、空間に「温度」を与えます。
無印良品では、2024年のリビングシリーズにおいて、「自然素材を取り入れた余白のある暮らし」をテーマに掲げており、硬質な家具の中に一つ柔らかい素材を混ぜるだけで全体が穏やかにまとまります。
家具・照明とのトーン合わせで意識したこと
Fさん邸では、木・白・グリーンの3色をベースに設計。
配色理論として、インテリアの黄金比は「ベースカラー70%・メインカラー25%・アクセント5%」とされます。
この考え方は、色彩学の第一人者・吉田泰彦氏による『インテリア配色のルール』(日本インテリア学会, 2020)にも記載されており、「自然界の色構成に近い比率ほど落ち着きを与える」とされています。
植物をメインカラーに据えることで、
家具や照明が引き立ち、視覚的にも“余白と統一感”が生まれました。
照明には、IKEAの「STRANDAD フロアランプ」を採用。
球体のディフューザーが光を柔らかく広げ、
ZARA HOMEのプランター表面に反射して陰影をつくる構成に。(参考:IKEA公式「照明デザインガイド 2024」より、“間接照明で素材感を際立たせる”)
おしゃれに見える“抜け感”を作るために意識した、3つの工夫
「おしゃれな部屋」は、決して物が多い部屋ではありません。
むしろ、“余白”と“リズム”のある空間こそ、洗練された印象を与えます。
インテリア誌『Casa BRUTUS』(マガジンハウス, 2024年6月号)の特集、「空間に呼吸を与えるデザイン」でも、建築家・長坂常氏が、“美しい部屋には“止まる”と“抜ける”のリズムがある。観葉植物は“抜け”の役割を担う重要なピース”と述べています。
今回のFさん邸でも、その「リズム」を意識して3つの工夫を取り入れました。
工夫① 高低差をつけることで、視線にリズムを生む
植物を床に並べてしまうと、どうしても“詰まった印象”になります。
そこで意識したのは、「高さの異なるグリーンを配置して、視線の流れをつくる」ということ。
具体的には、
床:フィカス・ウンベラータ(高さ約130cm)
棚上:ポトス・ライム(垂れる葉で動きを)
吊り下げ:エアプランツ
という構成に。
この手法は、デンマークのデザインスタジオ 「HAY House Copenhagen」 の展示でもよく見られるもので、
『Wallpaper* Magazine』(2023年9月号)の取材では、“Vertical layering — 高低差による視線の誘導は、北欧インテリアの基本構造”と紹介されています。
さらに、視線の上下移動は人の心理にも良い影響を与えるとされ、京都工芸繊維大学の安藤直人教授(環境心理学)による実験では、「空間内で目線の高さが変化すると、圧迫感が減少し、心理的な快適度が上がる」と報告されています(出典:日本建築学会『環境と行動の心理学』, 2021)。
💡工夫
植物を“並べる”のではなく、“段差で構成する”ことで、
空間に呼吸とリズムが生まれる。
工夫② 鉢やスタンドの素材をミックスして“抜け感”を演出
もう一つ意識したのは、「異素材を組み合わせて軽さを出す」こと。
すべて同じ素材の鉢で統一すると、どうしても単調になり、重心が下がって見えます。
Fさん邸では、
陶器鉢(ZARA HOME):マットな質感で落ち着きを
ラタンバスケット(無印良品):軽やかさと温度をプラス
ガラスベース(HAY Flower Pot):光を通して透明感を
という素材のレイヤー(層)をつくりました。
この“素材の抜け”は、『ELLE DECOR JAPAN』(ハースト婦人画報社, 2024年4月号)で特集された、「Designing with Texture」においても、“異素材を混ぜることで光の反射が分散し、空間が柔らかく見える”と紹介されています。
💡工夫
陶器・ラタン・ガラスなど、「透ける」「反射する」「温かみがある」素材を組み合わせると、空気が通るような軽さが出る。
工夫③ “3箇所でまとめる”ことで、視線を集約させる
部屋中に植物をばら撒くと、かえって散漫になります。
「空間全体にグリーンを散らすより、3箇所に“視線のフォーカルポイント”をつくる」ことが
洗練見えの鍵です。
この法則は、建築デザイナー・片山正通氏(Wonderwall代表)が『BRUTUS Casa Edition』(マガジンハウス, 2023年11月号)で語った、“人の目は三角構成を心地よいと感じる。空間デザインでも“3点の重心”を意識すると安定感が生まれる。”という理論にも通じます。
また、米国インテリア協会(ASID:American Society of Interior Designers)の「Design Psychology Report 2022」では、“Three-point balance”(三点バランス)が空間満足度を15%向上させるという興味深いデータが報告されています。
Fさん邸では、
- ソファ横(ウンベラータ)
- テレビボード左(エバーフレッシュ)
- 棚上(ポトス)
の3箇所を“トライアングル構成”に。
結果として、リビング全体の視線がまとまり、自然と“整って見える”印象になりました。
💡工夫
グリーンを「空間全体に散らす」のではなく、「3点で構成する」と、バランスと抜けの両立ができる。
Fさんのリアルボイス|Fさんに感想を聞いてみました!
実際に暮らすFさんに、施工後の変化やお気に入りポイントを伺いました。
“観葉植物がある生活”が、どのように気持ちや暮らしに影響を与えたのか──。
住まい手のリアルな声を通して、その効果を紐解きます。



Q1. 施工後、部屋にどんな変化を感じましたか?



空間がスッキリして、朝の時間が好きになりました。
仕事の合間に植物を見ると、気持ちがリセットされます。
Fさんが最初に感じたのは、“部屋に流れる時間の質の変化”でした。
以前は「朝起きてもスイッチが入らない」と感じていたそうですが、植物を取り入れてから「光が入る時間帯が待ち遠しい」と話してくれました。



Q2. 特に気に入っているポイントは?



ウンベラータの影。夕方になると壁に影が映って、まるでアートみたいなんです。
この言葉に、Fさん邸の変化の本質が現れています。
観葉植物は、ただ置くだけでなく“時間の経過”を空間に描く存在。
『ELLE DECOR UK』(2022年5月号)の特集「Shadow Play in Modern Homes」でも、“植物の影は、静かなアートであり、自然が創り出す時間のデザイン”と、表現されています。
Fさん邸では、夕方になるとリビングの壁にウンベラータの葉影が映り、まるでウォールアートのような美しいグラデーションを生み出します。
これは照明計画と植物配置を同時に考えたからこそ実現した効果です。



今後も植物を暮らしに取り入れていきたいですか?



寝室にも少しグリーンを置きたいです。
今度は吊り下げるタイプに挑戦してみたいです!
この言葉には、“インテリアを育てる”というFさんの変化が表れています。
最初は「難しそう」と感じていた植物も、実際に取り入れてみると、“部屋を整えるきっかけ”になったそう。
Fさんが次に検討している吊り下げグリーン(ポトス、ホヤなど)は、床スペースを取らずに“視線を上げる効果”があり、寝室の圧迫感を軽減するのにも最適です。
まとめ|観葉植物は“余白”を生み出すインテリアアイテム
観葉植物は、空間を飾るためのものではなく、整えるための存在。
Fさん邸を通して感じたのは、「何かを足す」のではなく、「余白をつくる」ことで部屋が洗練され、暮らしまで心地よく変わるということでした。
部屋にグリーンを置くと、視線の抜けが生まれ、光や風の通り方が自然と変わります。
そしてその変化は、見た目だけでなく、心の動きにも影響します。
忙しい日常の中で、植物の緑が“ひと呼吸おく”きっかけになってくれるのです。
おしゃれに見せたい時ほど、ポイントは“引き算”。
物を増やすのではなく、空間の呼吸を取り戻すこと。
観葉植物は、そのための最もシンプルで確実なアイテムです。


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